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異国の地にて、詩をつくる ―  「王国は蘇える」

投稿日:2010,01,02

新年、異国の地にて、遠く離れた国を想う中、詩をあらわす。
自然と、この詩ができた。
本日は、遠く離れた地でつくった詩を届けたいと思う。



「王国は蘇(よみが)える」

                   藤井厳喜

 私は、放浪、吟遊の詩人だ。
 幾つもの国々を旅して
 吾が故郷(ふるさと)に帰ってみると
 私の国は、亡くなっていた。
 「この国」としか呼び様のない
 異形(いぎょう)の国が、目の前にあった。
 放浪、道化の旅芸人にしか見えぬ
 この国の危うさを
 あなたに語ろう。…………
 王国は病んでいる。

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 大きな戦に破れて以来
 この王国に
 名誉を重んずる風は姿を潜(ひそ)め
 金貨が全ての基準となった。
 高貴が蔑(さげす)まれ
 下賤が褒めそやされる。
 聖なるものは忽然と消え
 聖なるものを求める者は
 狂人とさえ呼ばれる。………
 王国は病んでいる。

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 民は貧しく
 その心はもっと貧しい。
 豊かなのは
 異国からこの国に
 移り住んだ者ばかりだ。
 賭博場や売春宿や金貸しを
 営む輩が多い。
 働き者の民衆は職にあぶれている。
 希望も誇りもなく、その日暮らしだ。
 外国(とつくに)の淫らな音楽や舞踊が
 若者たちを、一層、堕落させている。………
 王国は病んでいる。

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 近頃この国で、一番力があるのは
 腐った玉葱の様な顔をした男だ。
 この男はかっては
 東の大国にへつらっていたが
 今は、西の大国に媚を売っている。
 かっては、虎に仕える猫だったが
 今は、豚に飼われている犬だ。
 この男は、西の大国の独裁者と内通し
 国を乗っ取る謀(はか)り事をすすめている。
 豚に飼われている犬が
 ふんぞり返って
 都大路を闊歩しても
 この男に、石を投げる
 勇気ある若者一人いない。………
 王国は病んでいる。

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 国の古い「仕来たり」は廃(すた)れ
 王は高齢で病気がちだ。
 王を救うと自称する者が
 王を傷つけ、その病を重くする。
 彼らは王家の血統の断絶を企んでいる。
 忠臣の声は、王に届かず
 大地に呻吟するばかりだ。………
 王国は病んでいる。

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 私の国は、何時の間にか
 伽話の中でしか、存在しなくなった。
 そして、その伽話を
 聴いてくれる者さえ
 もう、居なくなりつつある。………
 王国は病んでいる。

 ……………………
 ………………………………

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 私は、古い詩を思い出そうとしている。
 王は神々と話し
 戦士は武勇に長(た)け
 姫君たちが気高かった時代の詩(うた)だ。……
 王を讃えよ。
 王国は蘇える。

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 私の竪琴は、もう旅に疲れ
 その弦は、か細い。
 私の喉は、木枯らしに枯れ
 その声は、幽かだ。
 しかし
 この国の心ある民よ。
 この詩に、耳を傾けよ。
 もう私の、最期の詩かも知れぬ。
 夜明けまで
 技の限りに、琴を弾き
 声の限りに、詩を歌おう。………
 王を讃えよ。
 王国は蘇える。

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 寒気に耐える
 強い草のような人々よ。
 汝の心の中には
 先祖の血が記(しる)した、智恵の書(しょ)がある。
 先祖の腕が鍛えた、輝く剣(つるぎ)がある。
 その書を学べ。
 その剣を執(と)れ。
 汝の使命は
 自ずと明らかとなる。………
 王を讃えよ。
 王国は蘇える。

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 冬にも緑の葉を保つ
 木々のような人々よ。
 夜明け共に起ち
 太陽と共に進め!
 役人どもの体には
 蛭が吸い着いている。
 御用学者の脳には
 黴が生えている。
 為政者どもは
 果物に集る蠅だ。
 良くて小心者
 悪しきは売国奴だ。
 毎朝迎えにくる
 あの金ピカの馬車に乗る事だけが
 彼らの生きがいだ。
 もう、彼らに
 何かを期待する事は、止めよ。
 書は正すべき事を、教えてくれる。
 剣は斬るべき者を、知っている。………
 王を讃えよ。
 王国は蘇える。

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 男よ!
 女よ!
 老いて疲れぬ者よ!
 若くして賢き者よ!
 古(いにしえ)の歴史は
 今、吾らの内に
 血となり肉となって
 復活する。………
 王を讃えよ。
 王国は蘇える。

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 この国を
 侵略者と売国奴の手から
 奪い返せ!
 王を輝かせ
 この国を
 誠の吾らの国と為すのだ。
 有る可き歴史を
 有らしめるのだ。
 王国の危うき時は
 過去、幾度もあった。
 その度に
 名も無き民は起ち
 国を有るべき姿へと
 戻したのだ。
 革命と言うなら、それも良かろうが
   この国では、古来
 王の旗を掲げた革命しか
 成功した試しはない。
 斬るべき者を斬れ!
 立つるべき法を立てよ!
 王を讃えよ。
 王国は蘇える。
 王を讃えよ。
 王国は蘇える。

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 王を讃えよ!
 王国は
 今
 蘇える!

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