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映画評論「アバター」AVATAR (2) ビジネス分析篇- コンテンツ産業考察

投稿日:2009,12,30


 予告通り、本日は映画「アバター」をビジネス的観点から分析してみたい。

一言でいえば、これはアメリカ映画の将来性を示す画期的な映画である。
アメリカ映画はまだまだ行けそうだな、と底力を実感した。


1. 映画ビジネスは単なるコンテンツ産業ではない。
 このビジネスには「映画館ビジネス」も含まれる。

 アメリカ人にとって、映画は1人10ドル以内の気楽な娯楽である。
家族で、恋人同士で、友人連れ立って、映画館に出かける。
ポップコーンをほうばり、コーラで喉をうるおし、観た後で、映画を論じあう。
家族間のコミュニケーションの題材を与えてくれる、という点でも映画は貴重な存在である。
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父と娘が共通の話題を見つけるのは、中々に難しいものだ。

 アメリカ人は誰でも二つの職業を持っていると言われる。
一つは自分の職業、もう一つは、映画評論家である。

アメリカ人は、それほど映画について論ずる事が、おしゃべりする事が好きな国民なのである。

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2. コンテンツ産業としての映画産業の未来に不安はない。
しかし、インターネットやDVDの普及で、映画館産業はピンチである。

家庭の居間で見られる映画を、映画館で見るメリットは何か?
映画館まで、客の脚を運ばせるには、それだけの魅力がなければならない。

 その答えの一つは、普通の「一般映画館での大画面の3D上映」だ。
「アバター」はそれを実証してみせた。

 もっとも、それだけで映画館ビジネスが救済されるかどうか?は疑問だが、当面の答えの一つである事は確かだろう。

 過去、何度もアメリカでは、大迫力の3D・大画面ブームというものは(早くは50年代、次は80年代と)起きた事があるが、いずれも事業としては大失敗に終わってきた。

日本でもIMAX・3Dシアターなどが少し普及したが、興行成績の為の「流通数(劇場数)」が圧倒的に足りない。
 そうした配給環境、NETやレンタルDVD等の時代的要因、不況という社会的要因も考慮の上で、ジェームズ・キャメロン監督は、既存の映写設備がそのまま使える「赤青メガネ(3D用の特殊レンズ)」方式を応用し、技術経営要因も考慮した上で、見事、このプロジェクトを成功させたのだ。
 この成功を受け、世界の劇場では、彼の言う「映画館が、わざわざ出かけてゆく価値のある特殊な環境であり続ける為」に、デジタル立体上映設備の設置が増えてゆくであろう。

 私は最新刊「NHK捏造事件と無制限戦争の時代 」の最終章(第6章)「電波の歴史と無制限戦争」の章で、技術進化と社会の相関関係を詳しく取り上げた。
 第6章では、「『電波(技術)の開発』『メディア革新の歴史』こそ、まさに無制限戦争の様相を帯びていたのである。言ってみれば、電波メディアの業界では、20世紀の初頭からすでに無制限戦争が始まっており、今日、われわれが見聞きするラジオやテレビは、その凄惨な闘いの末に残された戦果でもあるのだ。」と冒頭に述べ、「新技術と社会の相関関係」等を中心に詳しく解説した。

 映画、コンテンツ産業は、そのビジネス・モデル構造を変えながら、イノベイティブなリーダー達により今後も益々変化を遂げてゆく事であろう。




3. 3D技術自体は、シナの映画産業にも盗まれてしまうかもしれない。
 しかし、3Dで観て面白い映画には、それなりのストーリー構成、創造的な関係機材の開発思想等が必要である。
アクション物なら、戦争ものなら何でもよいという訳でもない。

 ジェームズ・キャメロン監督は、ハリウッド映画のコア・コンピタンス(中核的競争力)を実によく考え抜き、企画・構想の段階から、3D技術を最も有効に活用するストーリーを練り上げたに違いない。



 シナも次なるハリウッド化を国家政策として狙っており、コンテンツ産業としても、アメリカの映画産業の将来は手放しで明るい訳ではない。
しかし、所詮、シナ共産党統制下にある「プロパガンダ・ツール」としてのシナ映画産業では、自由な映画作りは不可能であり、世界の才能ある映画人を集める事は難しいであろう。

 その意味で、ジェームズ・キャメロン監督は「アバター」でビジネスとしてのハリウッド映画の将来性を見事に明示したと言えるだろう。



====藤井厳喜より、ビデオ・レター===

 藤井厳喜の「2009年を振り返って」 【年末のご挨拶】



 2009年12月30日、2009年という一年を振り返ってみました。
2009年は特に政治、経済、メディア等で、「既存の秩序」が大きく崩壊した年でした 。
新しい発展パターンを模索しながらも、まだ確実なモデルが見えてこない中、2010年は景気の二番底に向かって進んでしまうでしょう。
政治経済、情報戦争など、一年を振り返りながらも、ビデオレターのように、世界的に益々、群雄割拠化する来年2010年以降の抱負も含め、メッセージをお届けしたいと思います。


 2009年も本当に残り僅かとなりました。

明日はいよいよ大晦日。
 大掃除で忙しいよ、という方も、NHKデモに参加くださる皆様も、本年も本当にお世話になり、誠に有難うございました。

 よいお年をお過ごしください。

            藤井厳喜


海外出張期間、私への連絡が、取りにくい事になりますが、以下のアドレスにご連絡を頂ければ、必ず情報はチェックしておりますので、宜しくお願い申し上げます。

ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ事務局e-mail : info.cfg.future@gmail.com








(↓↓こちらも『NHK捏造事件と無制限戦争の時代 』P460 で既に取り上げた、かなり分厚い本ですが、メディア論を考える有益な参考図書としてお薦めです。)