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映画『海角七号』のロマンと現実

投稿日:2009,11,12

台湾の友人、林建良さんから試写会の切符をいただき、銀座でやっている台湾映画『海角七号』の試写会に行ってきた。

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全篇130分に及ぶ、日本と台湾を繋ぐ、恋愛映画である。



日本版公式サイト
http://www.kaikaku7.jp/ 

台湾映画史上、最高のヒット作であり、12月下旬、日本でも一般公開される事になっている。

非常に前評判の高い映画だが、期待を裏切らず、大きな、そして爽やかな感動を与えてくれた。
音楽や映像の美しさも一流であり、全篇にちりばめられる様々なサイドストーリーも、現代台湾社会の生き生きとした人間模様として楽しむ事が出来る。
台湾を知りたい人は勿論、そうでない人にも是非、観て欲しい映画である。

この映画を通じて、痛感したのは、日本人と台湾人の感性の類似性である。
この映画の字幕協力をしている永山秀樹さんは、台湾研究フォーラムの主催者であり、彼のキャッチフレーズは「台湾は日本の生命線!日台は運命共同体である!」が、この映画を観ると、理屈ではなく、まさに感性的に日台が、運命共同体である事が実感できる。

映画のストーリーを細々と紹介する事は無粋なので、やめたいが、日本統治時代の日本人男性と台湾人女性の恋愛と、現代に生きる台湾人男性と日本人女性の恋愛が、時の流れを超えて交錯し、様々な感情の模様を描き出す。
60数年前の実らなかった恋愛と、現代の恋愛の成就が巧みに対比されて描き出されながら、観終わったものに温かい感情と、明日への希望を残してくれるような名作である。
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過去は過ぎ去り、既に死滅した事実になるのではなく、過去の過去に撒かれた種が、現在に花開き、成就しているというような淡い因果関係を感じさせる映画である。

過去の恋愛と現在の恋愛の時間を超えた交錯ぶりが、実に巧みなストーリー・テリングによって描き出されており、何かタイムマシーンにのって過去を見せられているような感覚にとらわれる。

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日台間に過去において作られた絆がいったんは消えてしまったようでありながら、連綿として継続し、今日においても芽吹き、花開いているような美しい感覚である。

聴けば、監督ウェイ・ダーション氏は、1968年生まれであるという。
純然たる戦後生まれであり、国民党治下で、シナ人教育を受けた人物が、しかしこのような美しい日台間の物語を創れるというところに、私は台湾の希望と底力を見る想いがする。

シナ製の反日プロパガンダ映画が、次々と公開される中で、台湾が我々に与えてくれた反日プロパガンダへの最高の解毒剤が、この映画でもある。


 過去の恋愛ストーリーにおいては、日本人男性が、終戦に伴う「台湾引き上げ」の時に、彼の愛する台湾人女性を日本に連れていかなかった事になっている。
ハッキリした原因は分からないが、男の優柔不断がそうさせたような印象を受ける。
男は、「見捨てたのではない、無理やり引き裂かれたのだ」と独白する。
また、愛する少女に対してこうも言う、
「許しておくれ、臆病な僕を。どうしようもないくらいに君に恋してしまった僕を。君を愛していても、諦めなければならなかった・・・。」

敗戦国の男として、愛する女性を、混乱する祖国に連れてゆくということは、如何にもためらわれたのであろう。

しかし、個人的な感情を言うならば、この男の優柔不断が如何にも私をイライラさせたのは事実である。
というのも、この男の躊躇と優柔不断こそ、戦後日本そのものの姿ではないかと思えるからだ。

何の勇気ある主体的決断をすることもなしに、外部からの圧力に流されてきたのが戦後日本政治だったのではないか。
内部にいくつもの試みや苦悩があったにしろ、国家総体として見るならば、一度も主体性を回復する事が無かったのが、戦後の日本国家である。
その最終結末が、鳩山民主党政権という形で表れている。

過去の不決断と優柔不断のつけが巡り巡ってまわってきたのが、この亡国政権ではないのか。
美しい映画を観終わった後に、しかし、こんなことも考えてしまった。

『海角七号』については、最新の拙著『NHK捏造事件と無制限戦争の時代』の別章・林建良さんとの対談のページでも取り上げられている。(P278からP301)
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 本書では、台湾についてゼロから学べるよう、「別章:アジアの無制限戦争」の中の台湾特集のページ以外でも台湾について学べるようになっている。(台湾だけで約200ページ近くあります)