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米中共同支配体制の恐怖 ― 米中共同管理下に入りつつある東アジア

投稿日:2009,06,02

米中両国の戦略的利害は、長期的には対立している

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しかし米中両国は、短期的にかつ戦術的に利害関係を共有しつつある。

東アジアは米中の共同管理体制、とでも言うべき状況になりつつあり、日本の国益は大きく損なわれようとしている


最近、北朝鮮の脅威に対して、表面的には日米韓の防衛協力は順調に進んでいるように見える。

例えば5月30日、シンガポールで浜田防衛相はゲーツ国防長官と会談し、北朝鮮の深刻な脅威に関しての共通の認識を確認した。

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また、日米韓三ヶ国の防衛首脳会談を開き、3ヶ国が北朝鮮の脅威に対し、強力で統一したアプローチを取る旨の共同文書を発表している。

クリントン米国務長官も、日本と韓国への防衛上の約束は守る、と明言し、米国防総省の幹部もそれに同趣旨の発言を繰り返している。
多くの日本人は北朝鮮の脅威に対し、アメリカが日本を守ってくれるものと胸をなでおろしていることであろう。
表面上は、北朝鮮の脅威に直面して、日米の防衛協力体制はより緊密になっているかのように見える。

確かにこれは現在起きていることの1つの側面である。

しかし、より大きな戦略的な視点から現状を見れば、より大きな危険が日本列島を飲み込みつつある。
それは、北朝鮮の脅威を口実としつつアメリカとシナが共同管理体制とでもいうべき秩序を東アジアに打ち立てつつあることである。

例えば、浜田防衛相とゲーツ国防長官が会談した5月30日、シンガポールでアジア安全保障会議が開かれた。
実はこの安全保障会議に参加する為に2人はシンガポールに同時刻に滞在していたわけである。

アジア安全保障会議に出席することが主目的で両者に赴いたのであり、そのチャンスを利用して日米の二国間会談が開かれたにすぎない。


それでは、このアジア安全保障会議で何が起きたのか?

最も大事なことは、アメリカとシナ両国の代表が北朝鮮の核兵器保有に懸念を表明する一方、両国が協調して問題解決にあたる姿勢を確認したことである。
ゲーツ米国防長官は北朝鮮の核の脅威を強調する一方、同時に「現時点で北朝鮮は米国の軍事的脅威ではない」とも明言し、北朝鮮の動きに対して直接的な軍事的対応策は一切取らないとも述べている。
そして北朝鮮が6カ国協議に復帰することへの期待感を表明した。

また、ゲーツ国防長官は浜田防衛相との個別会談で「北朝鮮影響力のある中国とはよく歩調を合わせていく必要がある」とも発言している。

ゲーツ長官は、浜田防衛相に会う前に、中共軍部の馬暁天副総参謀長と会談し、朝鮮半島の安定に向けて、米中両国が協力していく方針を確認した。
アメリカの国防長官が日本の防衛大臣と会う前に、中共軍部の代表と会ったという事は、極めて重視すべき事実である。

以上のような状況から分かるのは、北朝鮮に対しては米中は協力してその脅威に対処していく。
日本はその米中共同体制の枠内で行動しなければならないという手械足枷をはめられているのである。
米中両国は言うまでもなく核兵器保有国であり、北朝鮮に対する核抑止力を十二分に保有しており、北朝鮮の核の脅威をなんら感じていない。
ただ、米中両国とも北朝鮮が核兵器を保有し、さらにもしそれを他の国家や国際的テロリスト集団に横流しするとすれば、自国の大いなる脅威に転化することは認識している。
その共通認識から生まれる米中間の協力なのである。

これに対して日本の戦略的立場は全く異なっている
北朝鮮が同じ民族が構成する韓国に対して、おそらく核攻撃をしないとすれば、北朝鮮の核の脅威を最も感じているのは日本である

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以前にこのブログでも述べたように
(※ 参考; 「2009,05,27 日本海・海戦の日に思う ― 防衛力の基本は抑止力である」 
「2009,05,25  北朝鮮、2回目の核実験に成功 ― アメリカは核保有国北朝鮮を承認するだろう」 )

日米安保条約があるとはいっても、もとより日米両国の国益は完全に一致するわけではないのであって、あくまで自主国防力が主体となり、それを補う為の日米安保条約でなければならない
北朝鮮に対しては、日本は独自の抑止力を持つべきであるし、また持たなければならない。

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米中防衛協力体制のもとに日本が置かれるとはどういうことであろうか?
それは、日中間に政治的な摩擦を起こしてはならないという強力な圧力がアメリカから日本にかけられてくる、ということである。

例えば、日本国首相の靖国神社参拝や尖閣列島への自衛隊の配備などは日中間に大きな政治的軋轢を生むものとしてアメリカは日本にその様な行動を取らないように政治的圧力をかけてくるに違いない。
いや、今日既にそのような有形無形の圧力が日本政治の中枢にかけられているのであろう

言い換えれば、アメリカがシナの協力を必要とする限りにおいて、その分、日本の行動の自由は制約され、国益は損なわれてくるということになる。
何故なら、シナこそは今日の日本にとって最大の軍事的・政治的・経済的な脅威の源泉だからである。

アメリカ帝国の力は軍事的にも経済的にも緩やかながら長期低落傾向にある。
特に2008年9月の金融危機以来、アメリカの国力の衰退ぶりは目を覆うばかりである。
6月1日に明らかになったGMの倒産などはこの事を最も如実に物語っている。
軍事的に見てもアメリカはイラクから撤退した後も、アフガニスタンとパキスタンでの戦いに大きな勢力を割かねばならず、北朝鮮の脅威に対して真正面から立ち向かう余力は無い。
米中関係を重視するアメリカの姿勢はまた、台湾独立運動やシナ国内のウイグルやチベット等の少数民族の人権状況に対する極めて冷たい態度ともなって現れている。

過日、アメリカのペロシ下院議長が北京を訪問したが、シナの人権や自由の問題については明確な抗議の発言をしなかった。
かってペロシ下院議長はシナにおける自由と人権の抑圧に関して最も声高に非難するアメリカの政治家の一人であった。

このようなある種の米中蜜月時代が生まれてくるに関しては、経済も1つの大きな理由を構成している。
一言で言えば今、アメリカが発行する膨大な国債を最もよく購入してくれるのが中共政府である。

露骨に言えば、金を貸してくれるシナに対してアメリカは頭が上がらなくなりつつあるのである。

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6月1日、ガイトナー米財務長官はシナの王岐山副首相と会談した。
シナ側は今後ともアメリカの国債を大量に購入し続けることを約束し、アメリカ側を安心させた。

※ 関連記事:
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  ↑↑ ガイトナー長官「北京大で学んだ」 知中派アピール 『北京大学で講演』

世界最大の外貨準備を誇るシナは、その外貨準備の約7割をドル資産で保有している。
2008年9月にはシナは日本を抜いて世界最大の米国債の保有国になっている。
米オバマ政権は経済再建の為に今後も大量の国債を発行していかなければならない。
その為、米国債の最大の買い手であるシナに政治的に益々弱い立場に陥りつつある
もし、シナがドル離れをして外貨準備をドル資産で持つことを止め、ユーロその他の通貨に切り替えたり、米国債を今後購入しないばかりでなく、既に保有している米国債を市場で売り出せば、アメリカの財政は大きな危機に陥る。
この事は火を見るよりも明らかである。

大局的に見れば、帝国アメリカの力は衰微しつつあり、帝国シナの力は上昇しつつある
アメリカは自らの凋落しつつある力を補う為にシナとの協力関係を求めざるを得ない。
最終的にはアメリカと対立するシナ共産党政権も今のところ自らの力だけでは覇権を打ち立てることは出来ないので、当面、世界一の覇権国であるアメリカとの表面上の協力関係を装いつつ、自らの勢力を拡大し、いつの日かアメリカを上回る覇権国家になろうとしている。
この為、両国は必然的に現在、戦術的な協力体制を組みつつある、と考えられる。


かつてアメリカはソ連を同盟国とし、ドイツと日本を敵国として第二次大戦を戦った。
これはアメリカにとっての大きな悲劇であった。
アメリカの理想とソ連の理想は決して共存共栄できる類のものではなかった

アメリカは、同盟国としてソ連を遇することにより、共産主義の脅威を大きく育ててしまった
そして第二次大戦後に自ら育て巨大化した悪魔であるソ連共産主義と相対峙せざるを得なくなってしまった。
この事はアメリカの保守派の最も鋭く批判するところである。

今またアメリカは同様の過ちを犯しつつあるように見受けられる。
シナの国内を見るならば、環境・人権・自由等の点において今日のシナが世界最悪の国家であることはほぼ疑いの無い事実である。
シナ共産党の目指すものと、アメリカ建国の理念とは水と油であり全く相容れない異質のものである。

アメリカが今もし、純粋に勢力均衡的な視点からシナと準同盟関係、もしくは同盟関係に入るとすれば、それはアメリカにとって大きな悲劇であるばかりではなくアジア全体にとっての大きな災悪であり、結局はアメリカの力の凋落を早めることになるであろう。

何故ならアメリカはヨーロッパ諸国とは異なり、自由の理念によって成立した国であり、その理念によって異なる移民集団を統合してきた人工的な国家である

アメリカにとって理念とは必ずしも建前ではなく、それ自体がアメリカの国力の基礎となっている
自らの建国の理念に背くような外交戦略はアメリカ自身を内部から崩壊させてゆくであろう

このような米中協力体制の誕生に抗して日本が如何に行動すべきかについてはまた、稿を改めて述べたいと思う。

しかし、一言だけ言っておくとすれば、以下のようなことである。

2001年、ブッシュ・ジュニア政権のスタートに際して私は次のように指摘した

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「ブッシュ政権は2期8年続くかもしれないが、1期4年で終わる可能性もある。
ブッシュ政権は前任者のクリントン政権とは異なり、親日的な素地を有している。
この好機を利用して日本は来るべき4年のうちに集団自衛権が合憲であるという政府判断を打ち出さなければならない。
集団自衛権の承認なくして、日米安保条約が真の同盟となることは有り得ない。
ブッシュ政権が1期続くか2期続くかは分からないが、その後にはほぼ確実にアメリカで民主党政権が生まれる。
この民主党政権はほぼ確実にクリントン政権同様の親中政権となるであろう。
この親中民主党政権の誕生の前に日米関係を真の同盟関係に格上げしておかなければ、日本は大いなる悔いを残すことになるだろう
日本の存在は、米中協力関係の狭間にうずもれてしまうだろう。」


この予感は悪いことに的中しつつある。

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