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夕刊フジ連載コラム「米混迷大統領選と日本」第1回「米国デフォルトめぐる民主党と共和党の死闘」


2011年7月28日より木、金、月と3日間、夕刊フジの新シリーズ【米混迷大統領選と日本】でコラムを連載しました。

【米混迷大統領選と日本】米国デフォルトめぐる民主党と共和党の死闘

来年の大統領選挙を控え、米国は現在、未曽有の混乱状況に陥っている。デフォルト(債務不履行)がカウントダウンに入っているのだ。8月2日までに、米連邦政府の債務上限の引き上げが実現しなければ、米国債はデフォルトとなり、世界経済は大混乱する。当然、日本経済もモロにその悪影響を受ける。

 世界経済は2008年9月のリーマン・ショックを上回る大きな衝撃に襲われる。米国債はもちろん、米株式市場は急落し、1ドル=60円台となり、日本経済は円高不況に陥る。

 ヨーロッパは金融危機にあるので、ドルの対ユーロ・レートが対円レートほど、急落することはないが、金価格は一挙に1オンス=2000ドル台に急騰するだろう。(ただし、円高のため、金の円建て価格は僅かしか上昇しないだろう)

 こういった緊急事態に備え、あのジョージ・ソロス氏は自らが運営するファンドの75%を現金化している、という。未曽有の危機がアメリカ経済のみならず、世界経済を襲おうとしている。

 実は、債務上限引き上げに関する第1のデッドラインは、すでに突破されてしまっている。通常の立法化手続きに必要な時間を考慮すれば、7月22日夕刻までに妥協が成立していなければならなかったのである。第2の真のデッドラインが8月2日である。

 しかし、オバマ大統領と下院の多数派を占める共和党は、お互いの主張を譲らず、妥協の兆しは一向に見えていない。

 オバマ大統領は、ブッシュ前政権時代に行われた富裕層減税の取り消しを主張している。共和党は、社会福祉支出の大幅削減を訴えている。共和党内では、特に、草の根保守派であるティーパーティー派が債務上限の引き上げに原理原則的な反対をしており、後には引かない構えである。

 債務上限を引き上げさえすれば、米国債に対する需要はあるので、アメリカは国債をまだまだ増発する余裕はある。しかし、民主、共和両党とも、来年の大統領選挙を念頭に置いており、妥協できないのだ。

 オバマ大統領は、たとえ連邦政府がデフォルトをしても、それを共和党の責任にすれば、大統領選挙を有利に展開できると考えている。共和党サイドは全く逆で、デフォルトの原因をオバマ政権に押し付けて、2012年の大統領選挙での政権奪回をもくろんでいる。

 ティーパーティー派の代表的論客であり、大統領候補でもあるロン・ポール下院議員は「連邦政府はすでに財政破綻しており、デフォルトを宣言した方が財政赤字を拡大しないためにむしろ望ましい。8月2日以降、高齢者への年金給付がストップするというのは、大統領の戦術的脅迫である!」とまで主張している。

 共和党内では、大企業支持派と草の根保守派が鋭く対立しており、来年の大統領選挙では、共和党は分裂することになるかもしれない。(国際政治学者・藤井厳喜)

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